pour Princesse, Ballade romantique No.1
1 - 1st Mov. Mistsuru hodo no Sokoku ha ariya [7:08]
2 - 2nd Mov. Sanzensekai no Karasu wo Koroshita Asa [10:35]
Uterus, Ballade romantique No.2
3 - 1st Mov. Uterus [5:08]
4 - 2nd Mov. Mille-feuille [5:02]
5 - 3rd Mov. JigokuEzu-Uterus(Reprise)-Hello World [6:20]
Le lotus, Ballade romantique No.3
6 - 1st Mov. La fleur de lotus [5:16]
7 - 2nd Mov. Rhapsodie [5:07]
8 - 3rd Mov. Reincarnation [5:04]
Antares, Ballade romantique for K.Miyazawa
9 - 1st Mov. Shura no Sora [2:10]
10 - 2nd Mov. Pliocene [2:27]
11 - 3rd Mov. Ardeides [2:25]
12 - 4th Mov. Prodigue [3:07]
13 - 5th Mov. Antares ou Hoshimeguri no Uta [5:13]
Ballade romantique appendice
14 - Even if I knew that tomorrow the world would go to pieces... [8:35]

LinerNotes
「Ballade romantique」は2016年から関わらせてもらった有末剛緊縛夜話の劇伴をピアノ独奏用小品に再構築した楽曲集である。
演出脚本を務めた夢乃屋毒花作曲の歌曲の編曲も担当したため、同歌曲の引用と緊縛の付随音楽として創作したインプロヴィゼーションより成る。
インプロは短いモチーフを主要素材とし展開している。
バラードは邦訳で譚詩曲とも呼ばれ文学作品をモチーフとした自由形式の楽曲であり、情感や情念を楽曲かした器楽曲である。
図らずとも夢乃屋毒花、西瓜すいか両名の脚本の器楽曲化ということでバラード化と呼べるのかもしれない。

pour Princesse, Ballade romantique No.1
第十三夜『泡雪屋浪漫譚』(2016)再演版に付したピアノ劇伴のバラード化で、前半部と後半部の2楽章構成。「Ballade romantique」は第一作である浪漫譚より名付けた。第1番である本作は邦題「泡姫のための浪漫譚詩曲」である。

第1楽章「Mistsuru hodo no Sokoku ha ariya/身捨つるほどの祖国はありや」イ短調
蝉の鳴き声を模した短い序奏と、夢乃屋毒花作曲の「鎮魂歌」「猫のような娼婦になりたい」「三千世界の烏を殺し」三曲のメドレー。「三千世界の烏を殺し」の後はイ長調に転調し「鎮魂歌」の展開と「優、あるいは男のテーマ」を交え終結する。

第2楽章「Sanzensekai no Karasu wo Koroshita Asa/三千世界の烏を殺した朝」ハ長調
「CDEG」モチーフを素材とした主要部と、「鎮魂歌」のペンタトニックアレンジから成る中間部より構成されるインプロ楽章。泡雪屋浪漫譚の2ヶ所の大緊縛シーンに付した音像である。両楽章の副題はそれぞれ寺山修司、高杉晋作によるもので本作に登場する文章、あるいはその改変である。

Uterus, Ballade romantique No.2
第十六夜『泡雪屋散楽譚』(2017)に付した劇伴のバラード化。全3楽章構成、生誕と堕胎をテーマとした楽曲でタイトルは「子宮」。

第1楽章「Uterus」ハ長調
本曲の主要素材「AHCGHA」によるインプロ楽章。同公演では客入れ中および最後の大緊縛シーンに挿入。

第2楽章「Mille-feuille」ホ短調
変奏曲風ロンド楽章。同年のフココレポエトリーリーディング作品「さよなら果樹園」より「Beautiful Memory - Litchee」「Nightmare - Grapes」を引用。夢乃屋毒花の得意手法である二空間の同時進行を支える楽曲構造である。不幸の多層構造より「ミルフィーユ」と名付けた。最後に「鎮魂歌」の引用を経て陰湿に締める。

第3楽章「JigokuEzu-Uterus(Reprise)-Hello World」ハ長調
「ED DC CH HA」の下降音形からなる前半部「地獄絵図」と第1楽章の再現(Reprise)からなる後半部より成る。第1楽章主要主題の連呼とクラスタートーンでクライマックスを築き、小さく儚い後奏曲「Hello World」を付し全曲を締める。

Le lotus, Ballade romantique No.3
第十八夜『泡雪屋廻墾譚』(2018)に付した劇伴のバラード化で、3楽章構成。「離れゆく愛」をテーマとし、タイトルの意味はそれを花言葉とする「蓮」である。

第1楽章「La fleur de lotus」ト短調
「DC BBC DDC」を主要主題としたインプロ楽章。客入れ、及び善意の場面からクライマックスにかけて付した音像の楽曲化である。

第2楽章「Rhapsodie」ト短調
「鎮魂歌V」の動機の1つを基本素材として展開。後半部は同素材と夢乃屋毒花作曲「励ましの唄」和声進行、前述の「Beautiful Memory - Litchee」の主題の引用を伴い展開する自由形式の狂詩曲。

第3楽章「Reincarnation」ト短調
第1楽章の再現と、劇中で用いた「鎮魂歌U」「鎮魂歌V」の前奏音形を用いて展開。劇中の火事の場面の楽曲化である。なおト短調は「鎮魂歌」の主調であり、泡雪屋シリーズ通しての調性と言える。序曲である「鎮魂歌」の前奏の回帰より「輪廻」と名付けた。

Antares, Ballade romantique for K.Miyazawa
西瓜すいか脚本による第十七夜『銀河鉄道の夜-露-』(2018)に付した劇伴のバラード化。泡雪屋シリーズとは一線を画すので厳密には"第4番"ではない。劇中ではいくつかの宮沢賢治作曲作品を用いたがそれらは前作アンビエントアルバム「Shura no Sora」にて昇華している。タイトルは浄化の火、蠍座の赤い星より。「EEDCD EEGED」を主要動機としたメドレー形式だが全5楽章に分かれ、全曲に渡って主要動機が現れる。

第1楽章 序曲「Overture "Shura no Sora for Piano" 」
前述の主要動機を第1主題に据え、愛のシーンで用いた「露のテーマ」を第2主題にした2部構成。前者は天翔ける銀河鉄道であり空想の象徴、後者は生きた人間である現実の象徴である。

第2楽章 舟歌「Barcarole "Pliocene"」
オリジナルの銀河鉄道の夜にも登場するプリオシン海岸の場面のインプロ楽章。揺蕩う波を模した舟歌風の楽曲に仕上げている。

第3楽章 スケルツォ「Scherzo "Ardeidae"」
同じく本編にも登場する鷺の場面のインプロ楽章。軽快、というより怪しげで諧謔的なスケルツォ。公演内では少しずつ壊れていくカムパネルラを途切れる音形で描写している。

第4楽章 間奏曲「Intermezzo "Prodigal"」
宮沢賢治の放蕩シーン。聖人ではない生きた人間である宮沢賢治を描いた西瓜すいか脚本ならでは描写である。短調に成った主要動機と陰鬱な上京シーンに付した音楽から成る。

第5楽章 フィナーレ「Finale "Antares or Hoshimeguri no Uta"」
宮沢賢治作曲「星めぐりの歌」の変奏によるフィナーレ。主要主題と織り混ざり、「露のテーマ」を経て合唱に突入。最後は主要主題によるクライマックスを築き静かに全曲を締める。

Even if I knew that tomorrow the world would go to pieces...
リパッケージアルバム「Ballade romantique plus」としてM3-2019秋にリリースする際に収めたボーナストラックで4つのバラードの補遺。
2019年9月上演の「泡雪屋流寓譚」に付した劇伴曲で、「D-H-B♭-A-A♭-G」を主要主題にしておりハ長調の主部、イ長調の中間部より成る。

献辞 夢乃屋毒花に捧ぐ
思えば2016年の浪漫譚初演を観て、鎮魂歌(とのちに呼ばれる序曲)を弾きたいと言った時から全ては始まったのかもしれない。
当初はピアノ独奏曲化したいと思っただけだったが、劇伴として参加させてもらってとても楽しい音楽体験をさせてもらったと思っている。
この花に捧げた(pour la fleur)4つのバラードは夢乃屋毒花なくしては産まれなかった音楽であると強く思う。

Music & Playing Yuki
Based on Busuka Yumenoya
Suika Nishiuri
Kenji Miyazawa
Recording 2016.09(Tr.1-2)
2017.11(Tr.3-5)
2018.10(Tr.6-8)
2018.06(Tr.9-13)
2018.10:全曲リマスタリング、再録音

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