M3-2010秋(2010 10.31)にてリリースするYukiの2ndアルバム。今作のテーマは「キリスト教的宗教音楽」。自分の根底に流れている音楽がクラシック音楽であるならそれはキリスト教の下地から生まれたものであることには代わりはない。少しでもその精神に近づきたくて、半ば憧れに似た衝動で楽曲を描きこのアルバムをまとめた。今回は対位法を多用しフーガを多く扱っている。また前作は器楽の王ピアノ中心のアルバムであったのにたいし今回は器楽の教皇オルガンを中心とした響きでまとまっている。
Requiem aeternum e-moll fur Klavier (2010)
書き下ろし新曲。邦題は「ピアノのためのレクイエム(鎮魂曲)ホ短調」。数年前に構想(今にして思えば妄想)だけしてあった「Requiem Dramatique e-moll(劇的レクイエム)」の第1曲の断片を器楽曲として仕上げました。即興的な前奏を経て、ホ短調の主題(Requiem aeternam dona eis, Domine,~)、ロ短調の中間部(Te decet hymnus, Deus, in Sion~)を有する三部形式です。さらに当時は無かったコーダを付して劇的に楽曲を締めこれからの宗教的響きの幕開けを告げます。
Christe Missa Sacra f-moll (2006)
2006年に書いたオルガンによる小ミサ曲です。全曲が
Introitus.Adagio grandioso,religioso (0:00~)
Sequenz.Allegro animato (1:26~)
Offertorium.Andante maestoso (3:24~)
Communio.Adagio cantabile ma non troppo (4:55~)
Postlude.Presto assai(accelerando) (8:32~)
の5部に分かれています。IntroitusとSequenzの二つの主題、の計3つの主題で全曲が構成されています。
Intermezzo c-moll Nr.1 a 2 voci & Nr.2 a 4 voci (2009)
同じ主題を持つ2声のインヴェンション(Tr.3)と4声のフーガ(Tr.11)です。このアルバムを3部に分けるとすると導入→続唱op.21→終幕(Eli, Eli, lema sabachthani)となりその間を担う間奏曲として配してあります。
Kyrie eleison,op.21 (2005)
7つのKyrie(救憐唱)より成る小ミサ曲。本来は合唱を要する大規模楽曲でしたが今回の収録に際し2台オルガンとフルート、チェンバロといった器楽編成にしました。第1曲ハ短調は重々しいフーガ。第2曲ニ短調は劇的で攻撃的な楽曲。第3曲ホ短調は独奏オルガンと伴奏による悲歌。第4曲ヘ短調は重厚で壮大なクライマックス。第5曲ト短調は痛ましくも神秘的な二重フーガ。第6曲イ短調は打楽器も付しより攻撃的になった大クライマックスで、そのまま第7曲になだれ込みます。そして第7曲ロ短調は第1曲のリフレインで循環ミサを成立させています。
Lux aeterna d-moll,op.21bis (2006)
op.21の終幕として付した聖体拝領唱。自身の初期作品である「哀-minuet of sorrow-」を、今の自分なりに"完成"させた姿です。憐れみしか求めないop.21を未完と感じ、絶えざる光を持って終幕したフィナーレです。この詩だけは僕が最も愛した一節なので全文を載せておきます。
Lux aeterna luceat eis, Domine:
Cum Sanctis tuis in aeternum,
quia pius es.
Requiem aeternam dona eis Domine:
et lux perpetua luceat eis.
Cum Sanctis tuis in aeternum,
quia pius es.
"Eli, Eli, lema sabachthani" (2008)
Eli, Eli, lema sabachthani、それは磔刑の際にキリストが唱えた最後の言葉。主よ、主よ、何故我を見捨てたもうや。ゴルゴダの丘への行進曲である前奏とフーガより成るニ短調の楽曲です。今回のアルバムでは本来の姿であるオルガン版と、ボーナストラックとして自身の演奏によるピアノ版を収録してあります。