「Pianistic Poem」は2015年より音楽で関わらせてもらった「あんっ HappyGirlsCollection」ポエトリーリーディング公演に付したピアノ組曲集である。交響詩(Symphonic Poem)とは主に文学作品等を表題として組み上げるオーケストラ楽曲の形式だが、 本作はポエトリー詩原案を先行に組み上げたピアノ曲であるため「Pianistic Poem」と冠した。ピアノ組曲という体裁をとる以上、楽曲間連関が必要であると考えており本作は循環形式の手法でそれを実現している。
Goodbye Orchard, Suite for Piano (2017)
2017年のVol.3『ヴァルハラで逢おうね☆』公演に付したピアノ曲集。第1回公演に寄せた組曲《果実の子供たち》を引き継ぐ形で構成されている。
第1曲「Un-Happiness」ニ短調、ロンド形式
組曲《果実の子供たち》の第3曲であり、さらにそれを再構築した。A-B-A'-B-A''の構成をとり、A'部では前述の組曲の第1曲、第2曲の中間部主題を引用し、A''部ではメンデルスゾーン「結婚行進曲」を引用し陰鬱なフィナーレを飾る。B部は賛美歌「Les Anges dans nos Campagnes(荒野の果てに)」を引用している。
第2曲「Beautiful Memory」嬰へ短調、三部形式
この第2曲と第3曲は「Reminiscence_S, for Piano」を基とした双生児的楽曲で、主要主題が前奏と中間部に位置する三部形式となっている。本曲は「F#GAAH C#HH」を主要モチーフとし主部はそのモチーフの一部である「F#GA」で構成されている。また前作「Ballade romantique」でも「Uterus」「Le Lotus」内でも本曲の主要モチーフを引用しており「あんっHappyGirlsCollection」作品全体に渡って重要な意味を持つ主題である。
第3曲「Nightmare」ホ短調、三部形式
主要主題は「GAGF#E GF# DH」で主部は「D# E」の半音音度を基軸に構成された陰鬱な楽曲。「D#E」を受けベートーヴェン「エリーゼのために」へつながり引用している。
第4曲「Walkure!」イ短調、リフレイン形式
本組曲の終曲であり《果実の子供たち》組曲を総括するフィナーレ。ワーグナー「ワルキューレの騎行」をベースとしたリフレイン形式。大サビ部では《果実の子供たち》組曲の「檸檬」の引用から始まり第1曲「Un-Happiness」の主要主題を豪勢に回想しクライマックスを築く。
DressUp, Suite for Piano (2018)
2018年のVol.4『ドレスアップ』公演に付したピアノ曲集。前奏曲、後奏曲と主要第4楽章より成る。第1楽章「Honey」と第2楽章「Sugar」のそれぞれの主要主題は、全曲の第1主題・第2主題の役割を担い全体のいたるところで顔を出す。また前日譚である彩冬貴灯子「Ego:Egg」の主要主題を引用しており、第4楽章は同主題によるものである。本組曲はポエトリーリーディングという特性を最大限に引き出そうと音楽的な拍子感覚を取り除く実験的なものである。
Preludeイ短調の前奏曲はパレードの始まりであり、幻想的で奇怪な幕開けである。終盤ではのちの第1主題(第1楽章)、第2主題(第2楽章)を仄めかし幕を閉じる。
1st Mov. Honey
全曲の第1主要主題である「HCAFDCH」を基本モチーフとした陰鬱なロ短調の楽曲。
2nd Mov. Sugar, Scherzo
全曲の第2主題である「E♭DCB E♭FE♭D」基本モチーフとした攻撃的なハ短調スケルツォ。三部形式で中間部では主題がコマ切れとなりリズム感覚が崩壊した音楽となっている。
3rd Mov. mi tumi tu, Elegie
主要主題「F#GE」を基盤に第1主題、第2主題を織り交ぜながら展開するホ短調三部形式の悲歌。
4th Mov. Chimaera-Jinta, Finale
前述の「Ego:Egg」の主要主題「EG EGG」を素材とした主題からなるジンタから始まるフィナーレ。あらゆる箇所で第1主題、第2主題が顔を出し、後半では第3楽章を再現し夢幻を打ち切るように曲を締める。
Postlude
前奏曲の中間部のモチーフを基盤としたニ短調の後奏。ホ短調に転調後は前奏曲の主要主題を再現し静かに美しく幕を閉じる。
Amulet Maiden, Suite for Piano (2019)
2019年のVol.5『膣息愛~イキてるだけでhomeられたい!~』公演に付したピアノ曲集。序曲である第0曲と第1曲の親子関係を含む3組の宝石の物語で、全曲とも中間部にその宝石のイメージに合わせたクラシック音楽の引用を持つ。
No.0 Peridot, Overture、イ短調
第1曲の主要部の変奏である序曲。「AHCHA」を主要主題としている。
No.1 Topaz, mit "La folia/AC"、イ短調、三部形式
序曲を受けて開始される第1曲は主要主題の変形のユニゾン前奏から開始される。中間部ではニ短調に転調しコレッリ「ラ・フォリア」による展開を行う。
No.2 Sapphire, mit "Symphony 3/JB"、ハ長調、三部形式
ハ長調で幻想的で水のような第2曲。中間部ではブラームス「交響曲第3番ヘ長調第3楽章」を引用している。
No.3 Garnet, mit "El purbro unido/SO-FR"、ニ短調、三部形式
本組曲の終曲でオルテガ作曲ジェフスキ―編曲の「不屈の民」を引用した豪華なフィナーレ。コーダでは第1曲主要主題の再現を行い、第2曲を回想し全曲を総括する。